内向型人間の生きる道

内向型人間の生き方として考察した事を書いています。

「月夜釜合戦」~映画として誠実な映画~

昨日、神戸映画資料館で「月夜釜合戦」という映画を見てきた。この映画は大阪の日雇い労働者の町・釜ヶ崎を舞台にした人情喜劇映画だ。物語は旅芸人の逸見の息子が盗んだヤクザの釜が起点となり、そこにその日暮らしの大洞、幼馴染の私娼メイ、ヤクザ、釜ヶ崎の土地でビジネスを企む企業が入り乱れる。そこにはセックスワーカーの加齢、開発業者の問題、貧困など社会的な問題が多く盛り込まれている。もちろんそういう社会問題を提起する映画である、その一方で私が感動したのは映画としてのまっとうさだった。

フィルムはデジタルではなく、16ミリで撮影されているため全編がざらついた感じだ。

赤いスカーフをまいたメイが自転車で縦の構図で街頭を走るオープニングに心奪われ、メイの友人アケミとメイのハワード・ホークスみたいなマッチ箱のやりとりに心うたれ、警察から逃げるメイを俯瞰でとらえたシーンはロッセリーニのドイツ零年のようだ。

カメラのフレームイン、フレームアウトやアクションで笑わせる部分など本当に映画の笑いで素敵だった。左翼活動家の人が本当、面白かった。

役者も素晴らしい。特に大きな釜に携わる二人組元日雇い労働者、まっちゃん・山ちゃんの顔つきがなんともいい顔をしており、まるで黒澤 明のコミカルなキャラクターみたいだ。

あとなんといってもデモである。エイゼンシュテインの「戦艦ポチョムキン」やボリス・バルネットの映画「国境の町「などデモのシーンに弱い私だがそれがすごい迫力で描かれている。今の日本でこれだけデモをとれる映画監督はいないのではないか?

難点としてはもっと敵側の怖さを描いてほしい、という感じもした。また話の焦点がややぼやけている印象も受けた。しかし、ベストのタイミングでクローズアップが入るとか、役者がいい顔してるとか、ロケーションがいいとか、カメラのフレームに対する意識が高いとか、なんというか当たり前の映画的な倫理観に溢れている作品だと思い、いたく感動してしまった。これも釜ヶ崎の人との信頼関係と築いてきた佐藤監督だから成し遂げただからできたものだと思う。