内向型人間の生きる道

内向型人間の生き方として考察した事を書いています。

「ちーちゃんはちょっと足りない」~洗練された悪意~

普段、漫画を読まないのだがツイッターで話題の「月曜日の友達」が面白くて阿部共実さんにハマってしまった。そして文化庁メディア芸術祭に選ばれたこの漫画を知った。凄かった

物語はちーちゃんとナツと旭という女の子のほのぼのとした学園ものかと思いきや、後半のある部費の万引き事件をきっかけに心のダークな部分を凝縮した展開になっていく。

貧困・自虐的な性格・壊れないような気を配りあう友人関係・・・・

この物語の主人公はちーちゃんじゃなくてナツだ。ちーちゃんは無垢で少し精神障害も入っているだろうがまっすぐに成長する。前半で点数が上がるなど成長する場面がみられる。一方で八方美人だけど、利己主義的な側面を持つナツは最後まで成長しない。ちーちゃんの無垢さによってナツの本質が浮かび上がる物語構造は圧巻の一言。

この漫画を読んでドイツの洗練された喜劇映画監督エルンスト・ルビッチやアメリカの胸糞天才小説家ジャーリー・ジャクスンを思わずにいられなかった。

ちょっとした出来心が人間関係に波紋を浮かばせる。ある人は思っていたよりいい人だったり、自分の中の悪意を自覚したり・・・その様々な人の心理・性格を魅せるのがうまいこと・うまいこと。

またリボン、ヒーローショー、など様々な小道具が密接に物語に絡んでくる語りは鳥肌が立つほどうまい。

作者はさりげなくナツに救いの手を差し伸べていたり、最初の事件を起こすさりげない伏線、よいセリフが文脈によって残酷に聞こえる作者の徹底したナツへの追い込み具合・・・・阿部共実は天才だろうか。

物語の結末は最悪の形でむかえる。前述のシャーリー・ジャクスンのように甘い果実のような桃源郷を作る事になる。それが腐臭にまみれている事も知らずに。